MATAGIプロジェクトとは
なめし工場、大学、NPO法人等のメンバーが中心となって2013年4月より実行委員会を組織し、2016年5月現在、全国160の産地や団体をサポートしています。
獣皮を地域の有効資源に!
MATAGIプロジェクト誕生の背景と支援内容
狩猟による獣皮は市場からのニーズがない!?
獣害対策として駆除されたシカやイノシシ。その肉や皮はほとんど利用されることなく捨てられています。
たとえば獣肉を流通させるには、管理された衛生的な施設で速やかやに精肉する必要があるだけでなく、販路の開拓や地域ぐるみの取り組みが不可欠になるからです。
しかしこうした問題を克服し、野生動物との共生を考えながら獣害対策を行い、獣肉を地域活性化に役立てようとする自治体が徐々に増えてきました。
一方、獣皮をサイフやバッグの素材として販売するには、大きな問題がありました。獣皮はまず“なめし”を行う必要があります。なめし(鞣し)とは、読んで字のごとく革を柔らかくすることで、そのままでは腐ってしまう皮を「革」に変えることです。
しかし狩猟による獣皮は、従来の畜産による豚皮や牛皮をなめすようにはいきません。皮を剥ぐ際のナイフ傷があったり、余分な脂や肉片が付着していたり、四肢や尻尾・頭部の処理方法が狩猟者によってばらばらで、なめす以前の前処理に問題があったからです。
しかも、なめしてできたシカやイノシシの革の需要はほとんどないというのが現状でした。いつ獲れるか分からないので供給が不安定、大きさや品質が一定しない、野生動物特有の傷がある、価格設定が難しいなどの理由があるからです。
「獣皮をなんとか活用できないか」という産地からの相談を受け、2008年から獣皮のなめし支援を開始したのが、なめしを生業とする東京・墨田区の山口産業です。加工前の情報提供や、製品化や販売などに関する問題の数々は、同社だけで解決できるものではありませんでした。
そこで、産地、なめし工場、地域支援に関わる人たちのネットワーク「MATAGIプロジェクト」が2013年に誕生したのです。
獣皮を地域で活用するMATAGIプロジェクト始動
獣革を一般に流通させるのが難しいなら、産地の独自ブランドとして活用してもらおう──。MATAGIプロジェクトはこのように発想の転換をしました。そして、獣皮活用による地域活性を支援する「実行委員会」(企業や学校、NPO団体など)が、「産地」(市町村ごとの自治会、猟友会、民間企業、行政など)をサポートする仕組みをつくり、現在では、獣皮活用のさまざまな取り組みが始まっています。
MATAGIプロジェクトには試作革段階の産地も加入できますので(入会金等は不要)、情報を共有し、獣皮活用のアイデアを膨らませることができます。
山口産業株式会社
跡見学園女子大学
財団法人地球・人間環境フォーラム
一般社団法人やさしい革
NPO法人日本エコツーリズムセンター
ラセッテー製法で獣皮が本革素材になる
ところで、なめしの方法は世界的に、比較的容易な金属系の鞣し剤を使用する「クロムなめし製法」が一般的です。
しかしMATAGIプロジェクトでは、人にやさしく自然環境にも配慮した植物タンニン100%の「ラセッテー製法」を使用しています。動物皮本来の風合いと天然皮革に求められる物性を兼ね備え、日本エコレザー基準にも準拠する皮革素材です。
実際にラセッテー製法を使用した島根県邑智郡美郷町(2011年9月)や岡山県備前県民局(2012年3月)では、一般社団法人日本皮革産業連合会により基準値適合の認定を受けています。
獣脂がWAXに! 新たな収益事業も期待できる
MATAGIプロジェクトでは、獣皮をさらす際に排出する「獣脂」をさらに資源化する研究を重ね、2013年その実用化を確認。獣皮の活用と同様に、産地内における新たな収益事業になると期待されています。
あなたもMATAGIプロジェクトに参加を!
MATAGIプロジェクトでは、獣皮(イノシシまたはシカ)をなめし、皮革素材にして産地にお返ししています。MATAGIプロジェクトへの参加は以下のような流れになります。
1.試作革開発 | 獣皮がどのような皮革素材になるかを確認します。何が作れるか、獣皮の活用法のイメージを広げます。 |
2.個別面談 | 試作革を元に、相談会で個別面談を受け、本支援の申込みをします。 |
3.本支援 | 1枚からなめし加工支援を受けます。 |
4.販売支援 | MATAGI展(展示販売会)出展や、クリエイティブ・ディレクターによる製品メーカー・デザイナー・小売店と直接商品開発~販売を実現するブランド力向上事業に参加いただけます。 |